身の毛がよだつこと
先日、会社のクーラーから虫の足が飛び出てきて、ひさびさに足の先からぞわぞわっと身の毛がよだつ思いがした。
数年前も身の毛がよだつ思いをしたことがある。
夏の夕方、住んでいたアパートに帰ろうと、自転車を走らせて敷地の入り口まで近づいた時、高い灰色のブロック屏の前に二人の子供が立っていた。
薄暗くなった路地の、やけに明るくみえる屏に平面的に貼りついたように見えた二人は、親の帰りを待って、パジャマ姿のまま遠くを見ていた。
その浮世離れした風貌を見て一瞬、この世のものではないものをみたと思った。
一緒にいた友達が、二人を見ても気をとめないことに現実の人間であると思いなおすことができたのだが、そんなかんちがいをしたことすら、後で友達にも話せなかった。
それだけ身の毛がよだつ思いだったのだ。
二人の子供は今、成長したことだろう。
そんな機会はおとずれないが、二人には謝りたい。
身の毛がよだってすみませんでした。