室生犀星の小説
今までは古本などを買ってきて読んでいたのだが、先週末、図書館で借りよう、と思い立って利用者登録をした。
なにしろお金を使わないで本が読めるから、次から次へと読みたくなる。
まずは馴染みのあるところから、三浦しをんの「私が語りはじめた彼は」を読んだ。
さすが、と思う一冊。
次に、棚に並んだ本を見ていて、楽しく読めそうだと思った八木沢里志の「森崎書店の日々」。
温かさがしみる、いい本だ。
このお話のなかで、主人公の貴子が本を好きになるきっかけになった、室生犀星の「或る少女の死まで」をぜひ読んでみようと思った。
静かな感銘を受けた。
「杏の若木が多かった。若葉のかげによく熟れた美しい茜と紅とを交ぜたこの果実が、葉漏れの日光に柔らかくおいしそうに輝いていた。あまりに熟れすぎたのは、ひとりで温かい音を立てて地上におちるのであった。」
とても綺麗な文を書く人だ。
本の中には、子供の清らかさや、やさしさ、女の子のはかない美しさなどが書きとめられていた。
幼少期に母と別れたためか、哀しい見方をする時があるけれど、まっすぐで、すきとおった心が伝わってくる。
室生犀星が好きになった。
明日は何を読もう。
小説のことを楽しく考える日々である。